膝の痛みに対する考え方 その2 |
3) 膝関節に効果のある、スムーズで安定した、痛みのない関節の動きを取り戻すことを目的とした運動療法を考えなおす。
逆に考えると、膝の具合が悪くて、ヒアルロン酸を外から注射で入れなければいけないという状態は、元の自分自身のヒアルロン酸による「潤滑液」の働きがうまくいかず、結果として日常の動きの中でも、大量の摩擦熱が、炎症として発生しているということになります。
膝関節の症状は一般的に、炎症 → 水腫(水がたまる) → 変形 というように悪化していきます。そしてこれは、「潤滑液」がうまく機能しないための摩擦による発熱が、大きく関係します。私達は、この発熱を徹底的に取り除き、症状の進行を止めるために、生理的氷冷法によって対応します。
動くと摩擦によって発熱する。しかし動かないと筋肉が衰えるし、将来、再び自分の力でヒアルロン酸由来の潤滑液を、充分に関節内に供給する能力を取り戻すためにも、膝をしっかり使っていく必要があります。
この矛盾を埋めるためにも、管理された正しい運動と、それによって発生した運動熱に対する外からの積極的な熱の処理が、関節の機能を再生させるための大切な要因になると考えています。
先に挙げたような足の大きな筋肉は、パワーを増強し、ジャンプ力を上げるといった、スポーツパフォーマンスためには、重要な筋肉ですが、ある程度の年齢の、膝に問題のある患者さんの場合は、日常生活での痛みや不安定のほうが重要な問題であり、膝関節を安定化させるインナーマッスルを鍛えるためには、従来のリハビリやジムで行われている運動方法は適切ではないのではないか、運動療法に対して視点を変えた方法が必要ではないかと私達は考えています。
具体的には、当院では管理された生理歩行を中心とした有酸素運動の繰り返しと、特殊なスクワット、私たち治療者が介助しながら行う屈伸運動を柱として、「インナーマッスル」を強化していきます。
もう一つ運動療法の目的として、先ほど2)で述べたヒアルロン酸供給能力の再生も視野に入れています。
一般的な骨の形を思い出してください。漫画の中のイヌがくわえている骨がわかりやすいかもしれません。あの骨の端の部分、太くなっているところは、関節になるところですが、柔らかい海綿質という組織でできています。ちなみに細い中央部分は、ち密質という組織で非常に硬く作られています。この関節側の海綿質の部分は、たくさんの隙間があって、このなかに「潤滑液」が蓄えられています。
これが間欠的な圧力、すなわち関節にかかる、抑えたり緩めたりする運動の反復によって、スポンジ効果として関節の中に、必要に応じて供給されます。機能が低下した膝関節において、この潤滑液供給ためのスポンジ効果を再生するためにも、関節には、正しく穏やかな生理的な圧力を、繰り返しかけ続けることが大切になります。このためやはり、先に述べたような管理された生理歩行や屈伸運動、特殊スクワットなどが有効になります。
以上のように当院では視点を変えることによって、一般的なこれまでの普通の治療で治らなかった頑固な膝の痛みや、手術しかないといわれている患者さんに対し、可能な限り対応させていただいております。
しかしながら、これらの保存的な自然治癒力に依存した治療法は、どなたにでも同じように効果が表れるとは限りません。患者さんの根気と努力,そして痛みの変化に対する良い意味での「鈍感力」が必要です。
もし、手術がいやで、自分の力で膝の症状を克服したい方、治るためなら少し根気よく努力しようと思っている方は、一度当院にご相談ください。患者さんご自身が、他人任せでなく、本気になって頑張ってみようと考えられておられるのなら、私達はプロの治療家として、できる限りの技術と知識を駆使して、本気になって付き合わせていただきます。