日本人の特徴について考える③

 
 日本人の特徴について考える
 
 
③食事と日本人
 
 
食事と日本人

「このダイエット食品は、アメリカで大変評判になりました」

「今ヨーロッパで、この食品が健康に良いと取り上げられています」

よくマスコミなどで耳にするフレーズです。しかし私達は、食事に対しても、人種の違いが大きくかかわっていると思います。

 

東アフリカで猿から進化してきた人間は、(ダーウィンの説が正しいと考えると) そのまま世界中に広がって、猿と同じような食物を探し求めながら、猿と同じ「雑食性」を保っていました。白人、黒人、黄色人種の違いがはっきりあらわれてきたのは、5万年前くらいからだという説があります。

 

そして日本人の祖先になっているのは、ナウマンゾウや大型のシカなどの動物を追って、大陸から渡来した人達と、南シナ海や太平洋の島々から海路渡って来た人達が一緒になって、何代も時をかけて、この島国に(当時は大陸と陸続きだったようですが)定住していった人々だと言われています。

 

氷河期が終わって、縄文時代の木の実の採取や小動物の狩りを通じて、森の恩恵を受ける食生活から、徐々に弥生時代の稲作による「米」を始めとする穀物中心の生活に変わり、様々な時代の波を受けながらも、この稲作を中心にした日本人の農耕生活は、第二次世界大戦の頃まで連綿と続いていました。

 

仏教の影響を受けて、天武天皇が発布した肉食禁止令や、農耕に役立つ牛や馬を食さないという習慣から、山岳地帯のキジや鹿、猪を食べる人たちを除いて、都市部や沿岸部の人たちは、肉類を積極的に食べる習慣は「千年近く」ほとんどなかったと思われます。明治に入って牛鍋などが少しずつ広まってきましたが、これも一部の人たちに限られていました。

 

話は変わりますが、現在の西洋の人達は、東アフリカから長い旅を経て、北に広がって北欧などにたどり着いた一部の人達が、猿の食べる木の実や昆虫、小動物の少ないこの地で生きてゆくために、トナカイやアザラシなどの大型動物による肉食中心の食生活に、順応していったと考えられています。様々なアレルギーや食中毒を繰り返しながら、「3千年」位かかって、もともと猿と同じものを食べていた人間が、肉食に適した身体に変化していきました。

 

 

 

西洋人に特徴的な短い腸は、ライオンやヒョウのような肉食動物と同じように、食べた動物性たんぱくが腸の中で腐敗し様々な問題を起こす前に、体外へ素早く排出するために、短くなっていったと思われます。このために、骨格的にも胴体部分が短くなり骨盤と胸郭が近づくことによって、手足の長い、今の西洋人の姿かたちが出来上がったと考えられます。

  

  

それとは逆に、日本人やアジア人の祖先にあたる人達は、猿が普通に食べていたものを求めて、東アフリカから西へ広がってきました。氷河期が終わった後の豊かな森やジャングルのおかげで、それほど大きな食性の変化や体形の変化をする必要もなく、そのまま当たり前の進化をしてきたと言えます。(研究者によっては、色々な意見があるようですが・・・。)

 

このように様々な時代を経て、日本人は穀物を中心にした食生活に適応して、雑穀や玄米の胚芽をしっかり消化できるように、腸が長くなっていきました。これは繊維の豊富な食物を食べている、牛や馬に代表される草食動物が、消化管が長く複雑になっているのと同じ理由だと考えられます。

 

また日本の国土は山が多く、おいしいきれいな水が自由に簡単に手に入る世界でも数少ない国ですが、このおいしい水は「軟水」に分類され、ミネラル分の少ない水です。(大陸の水は硬水が多く、それ自体にミネラルは豊富に含まれていますが、おいしくない水と言われています)

そのため、この水だけでは充分なミネラルの補給ができないので、海産物からミネラルを摂取するようにしていたのも、日本人の食生活の特徴でした。(最近、味付けのりや佃煮、わかめの味噌汁やカツオ出汁、昆布出汁などの海産物が食卓に上ることが少なくなって、今の日本の若い人たちの細胞内のミネラルが極端に減っていると言われています。)

  

このように、一般の日本人は、普段は穀物を中心にして、豆類や海産物によってタンパク質やミネラルの不足を補っていました。山岳地帯や僻地の集落に住む一部の人たちがキジや猪、鹿を食べていたとしても、多くの普通の日本人は、常に肉食をする習慣はありませんでした。腸の長さや体形から見ても、日本人は、肉食はあまり得意でない人種であったと思われます。

 

今、ここで私たちが考えなければいけない事は、現在の食事の形が日本人にとって適しているかどうかという事です。

 

最初に書いたように、アメリカで評判とか、海外のデータで良い結果が出ているといわれる食品が、果たして日本人に合うのかどうかはよく考える必要があります。

 

実は、日本人は7割以上の人達が乳糖分解酵素を持たない人種です。

 

北欧の人たちは100%の人達が乳糖分解酵素を持ち、一部の山岳民族の中には、誰も乳糖分解酵素を持たない人達もいると言われています。健康に良いと言われている牛乳でも、これをしっかりと有効に取り入れ、活用することができる人種と、それができない人種がいる事を、知っておいてください。このように人種によって、おなじ食品を摂取しても、それをうまく栄養に出来る条件は違っているのです。

 

ゴーギャンの絵に散見されるように、タヒチを始めとする南太平洋の島々に住む人達は、元々タロイモや果物と海産物だけで、あの絵のような筋骨隆々の身体を保っていましたが、しかし西洋人が入り込むことによって、肉食やアイスクリーム、バターなどの乳製品を持ち込んだことで、今に見られるような、100kg以上が当たり前の、肥満した人達が多数を占める民族が出来上がったと言われています。

 

 

 

最近、肉を食べると長生きできるというようなことが、一部のマスコミで言われていますが、私達は少し異論があります。牛肉や豚肉などの動物性たんぱくが消化されるとき、大量のアンモニアが発生し、これを分解処理するために、肝臓の解毒機能が大きな負担を負うことになります。

 

西洋人の肝臓は肉食に適応しているために、このアンモニアの処理も問題なく行えますが、一般的な日本人の肝臓は、このアンモニアの処理に対する能力は低く、肝臓の解毒作用に大きな負担がかかってしまいます。このため肉食に偏ると、肝臓のその他の大切な機能を低下させてしまうことになり、体力や持久力の維持、消化、免疫機能などを弱らせてしまうことになります。

私達は、「肉を食べると長生きできる」というよりは、元気な老人は肝臓が強いために、「高齢になっても肉を食べることができる」ととらえています。

 

先ほど述べたように、人間が人種の枠を超えて変化し、その環境や食生活に適応するためには、1000年単位の時間がかかります。戦後、食生活が変わっていった日本人が、これを完ぺきに順応し受け入れることができるのは、まだまだ遠い先のことだと思われます。

 

今、アレルギーやアトピーなどが増えていることを見るにつけ、異種タンパクの摂取の弊害も考えあわせて、日本人の食事を根本的に考えなければいけない時期に来ているのではないでしょうか。

 

私も焼肉やステーキが大好きです。ときどき無性に食べたくなる時があります。しかしこれを西洋の人達のように、主食として毎日食べ続ける事は、まだ少し早いのではないかと思われます。

 

昔、アメリカの漫画などで描かれる日本人の特徴は、メガネをかけてカメラをぶら下げた、出っ歯の姿が特徴的に書かれていました。最近、出っ歯の方が少なくなりましたが、確かに以前は日本人に出っ歯が多かったように思われます。それに比べて西洋人の人達にはあまり出っ歯の方は見かける事はありません。

 

これも人種による体形的な特徴であり、このことについて興味深い話を聞いたことがあります。

 

日本人は本来、線維性の食物を食べる習性等により、牛や馬、ヤギなどの草食動物と同じように、線維をすりつぶすために前歯が出ており、ライオンやトラなどの肉食動物は、肉を噛みちぎる必要があるために、前歯は平面にそろっている。これはその動物の主な食習慣の違いによるものだという事です。

 

日本人の特徴が出っ歯であらわされ、西洋人に出っ歯が少ないのは、数千年における食生活の違いから起こってきた、その人種の特徴かもしれません。

 

またトイレにおける排便の姿勢も、腸が短く動物性タンパクの腐敗を避けるために、速やかに排便しなければいけない人種と、長い胃腸でゆっくりと線維性の食物を消化吸収する人種では、排便方法が変わるのは当然で、「宿便」などの問題を考えた時、腸の長い日本人の排便は、以前の和式トイレのように、しっかりとしゃがみ込む必要があったのではないかと思われます。それが日本人の長い腸と健康な食生活にとって、大きく貢献していたのではないかと想像できます。

 

しかし今、新しく家を建てる時、残念ながら和式トイレを注文する人や、それを作ってくれる業者はほとんどいないと思います。

 

人間は、その祖先である猿と同じように雑食性です。しかし同じ猿でも、ヒヒの仲間のように肉食を中心にしている種もあります。

 

人間も、それぞれが進化する過程で枝分かれして、その人種によってさまざまな食生活をするように分化してきました。そしてそれは、千年単位の長い時間をかけて、その体型や生活習慣にも大きな影響を与えてきました。

 

千年後、われわれの子孫がどのような食事をしているかは、私達には想像もつきません。

 

しかし、戦後70年~80年の今の時代に暮らしている我々が、健康的でその人種に合った食事を考えた時、世界文化遺産にもなった「日本食」に誇りを持って、祖母や母親が精魂込めて作ってくれた、あのころの食事にもどる方が、近道ではないかと思っています。