関節を整復する意義と根拠

 

曲接骨院の治療において大きな柱になっているのが、「根本原因」を深く追及するということです。特に私達柔道整復師は、関節と筋肉の隠された問題を掘り起こし、これを確実に整復することによって、患者様の回復治癒を促してゆくのが使命だと考えています。

一般に捻挫と言われる状態では、骨に異常がないと診断された段階で、軟部組織に対する対応やそのための固定が行われたとしても、骨のわずかな位置異常は整復されることはほとんどなく、これが見逃がされ、そのまま持続的に残されてしまっているケースを、私たちの日々の診療の中でも多く見かけます。

 

捻挫とは正常な可動範囲からの逸脱ですから、そのあと必ずわずかな位相差(動きの中でのずれ)を残します。そしてそれがわずかな位相差であっても、関節のアライメントや、接合面の平行性を失うことによって正常な潤滑機能が働かなくなり、これが徐々に発熱傾向や機能不全を作って、炎症や痛み、関節運動制限などの原因を作ってしまいます。

 

これらの捻挫による位相差は自然に戻ることはほとんどなく、若い元気な時期は、周辺の筋肉のコントロールによって何とか症状を出さずにいても、年齢とともに筋力の低下によってこれらの問題が露呈してきます。突然起こる膝や足の痛みはもちろん、腰や肩の痛みやこりなども、これらの潜在的な関節の位相差が根本原因になっていることが良く見られます。また若い人達でも、過剰なスポーツや環境の変化などによって、筋肉の疲労が限界を超えるような場合、この潜在的な位相差の影響が出てしまうことも珍しくありません。

 

曲接骨院ではこれらの過去の捻挫や事故,転倒や転落による残された関節の位相差(動きの中でのずれ)を詳しく細かく探し出してこれを整復することで、隠れた原因を取り除き、今の症状を治癒に向かわせるように心掛け対応しています。
 
 

 

また仕事やスポーツ、家人の介護や日常生活の不良姿勢、病後や加齢による筋力低下(表からは見えないインナーマッスルも含めて)によって、関節の不安定性やゆるみが、習慣的に持続すると、この場合も関節の位相差を起こしてしまいます。(ルーズショルダーや膝の不安定、産後の骨盤のゆるみなどがよく知られています。)

 

 

このゆるみによる位相差も、先ほど述べたように、関節面の不整関係を作ってしまうことで、内包しているヒアルロン酸由来の滑液(潤滑油)が正しく機能せず、これによって関節の発熱炎症や変形の原因を作り、(タンパク質は41℃以上になると凝固する)その影響は局所だけでなく、歩行や身体バランスの異常を通して、様々な場所にも多岐にわたる症状を作っていきます。

 

 

 

この外傷や「ゆるみ」によるわずかな位相差は、レントゲン検査やМRIなどの画像診断では発見することができません。

曲接骨院では、充分な時間をかけた問診による病歴、外傷歴の確認と、関節の動きを主体とした全身に及ぶ特殊なスクリーニングよってこれらの問題を浮かび上がらせて、その問題に対して患者様に出来るだけ苦痛を与えない、穏やかで安全な方法を用いて整復治療にあたります。また、日常生活の細やかな指導やアドバイス、歩行を中心とした、症状に即した運動療法などを処方し、整復後の身体の安定と再発予防に努めます。

 

仕事やスポーツ、日常生活の姿勢などによって、位相差を整復しても安定させるのが難しい患者様には、定期的にフォローアップを続けることで、患者様の全身の安定と真の回復、健康維持のお手伝いをさせていただきたいと考えています。

 

筋肉を整復する意義と根拠

 

骨格系を正しく整復することによって、多くの症状や問題を解決することができますが、それでも尚、残る症状には筋肉をはじめとする、軟部組織の対応が必要になります。

多くの筋肉は、筋線維が筋周膜につつまれて筋線維の束を作り、それがいくつも集まって筋肉として活動しています。そしてその筋線維の束それぞれが、層状に平行に積み重なり、互いの繊維の束の間でうまく滑走することで動きを作っています。この筋肉のスムーズな動きを作り出すためには、それぞれの層の間に細胞外基質のプリテオグリカンなどが「潤滑剤」の役目として存在し、摩擦を防ぎながら動きを保っています。(関節の中のヒアルロン酸由来の滑液などと同じ役目)

 

もし筋肉が損傷したり、細かい断裂などが起こると、層の平行性が失われ「乱接」と言われる状態になり、スムーズな滑走ができなくなります。また平行を失った筋線維束の間には、プリテオグリカンやリンパ液などが偏って貯留し、動きを妨げ、筋肉の痛みや過剰な緊張状態を作ります。

 

私達曲接骨院ではこの平行性を失い、乱接状態になった筋肉を整復することによって、層の平行性を取り戻し、筋線維束の間に偏り貯留したプリテオグリカンやリンパ液を均等にひろげ、余分を排出するように対応しています。

これによって筋肉は、スムーズな潤滑と動きを取り戻し、損傷や断裂の傷も修復していきます。たとえば、踵骨骨端炎足底筋膜炎などの足部の治りにくい疾患腱鞘炎原因不明の手足や指の痛みなど、また局所の明確な炎症を伴わない肩、肘、手首股関節、膝、足首などの痛みだけの症状も、実はその周辺や少し離れた場所にある、関連した筋肉の微細な筋断裂や損傷が、潜在的な原因になっていることがよくあります。

 

また、いわゆる椎間板ヘルニア坐骨神経痛脊柱管狭窄症などを疑われる下肢に拡がる強い痛みや歩行障害などの症状も、殿筋群(お尻の筋肉)やハムストリングの損傷や筋膜の問題などが筋性防御(周辺の筋肉が患部を守るために硬く張ってくること)や絞扼障害、アナトミートレインといわれる筋肉系統の連続性に沿って問題が拡がっていくことにより、このような病状に似た症状を作り出しているということも、珍しくありません。

 

私達は、このような治り難い、原因の分かりにくい症状に対して、詳細に筋肉の問題を検索し、隠れている原因を探し出して、これを整復し適切な処置をすることによりその症状を回復に向かわせるように努めています。曲接骨院では、このような筋肉の整復のために、特殊なローラー器具(用途や筋層の深さによって使い分ける)や静水圧をかける(水の圧力につつまれた状態を作り出す)ことのできる治療器具によって、レオロジー効果を活用して、安全に穏やかに問題に対応していきます。(器具の詳細は曲接骨院が大切にしていることの欄をご参照ください。)

  
 

このような層の平行性を作り出し、スムーズな筋肉の動きを取り戻す整復は、筋損傷ばかりでなく、強い筋緊張状態にも有効で、運動後の激しい筋疲労や仕事などによる筋緊張などの回復にも有効です。

以上のように筋肉の乱接を除去して平行性を取り戻し、筋線維束間の潤滑、滑走を回復させる筋肉の整復は、より確実な治療と健康回復のために、見落としてはいけない重要な要件であると私達は考えています。