ぎっくり腰のほんとうの原因を考える |
<大切なこと>
1)ぎっくり腰の本当の原因は、痛くなったその時の動作や姿勢ではない。
2 朝、普通の動作で急にぎっくり腰が起ってしまうのは、その時のクシャミや顔を洗う姿勢、ズボンをはく姿勢が原因ではなく、前の日までの肉体疲労や心身の負担の蓄積が本当の原因で、血液循環が整っていない朝起きた時に、あたりまえの日常動作で起ってしまう。
3)特に無理な事や疲れるようなことをしていないのに、ぎっくり腰が起ってしまったときは,前日までの長時間の椅子の作業や会食、車の運転など、椅子に座る姿勢が原因になる。
朝、顔を洗おうとして、前かがみになったとたんに、腰が痛くなった。
朝、ズボンをはこうとして足を上げたとたんに、腰がギクッとなった。
こんな風に、いろいろな形で、腰痛が始まります。これらは、俗に「ぎっくり腰」といわれる、突然起こる腰周辺の痛みです。テレビなどでは、重いものを持ったり、何か無理な恰好をした時に、腰がギクッとなって、動けなくなったというような場面を、よく見かけます。しかし、実際のところ、そのような形で腰を痛められた患者様は、曲接骨院の長い治療の歴史の中でも、ほとんど遭遇することはありませんでした。
高齢者が荷物を持った時に起こる、圧迫骨折でも、痛みが出るのはもっと時間がたってからです(数日たってからということもあります)。まして普通の健康な青壮年が、「本当の重いもの」を持つときには、腰を構えて持つでしょうし、もしそれが、大きな負担になった場合でも、そのとき持つことができたのであれば、痛みは、筋肉痛として、翌日以降に出現してきます。これは、引越しの手伝いや、慣れない畑仕事などでも同じです。事故や、外傷以外で、その時の原因が、すぐにその時点で痛みの症状を出すことは非常に少ないと思われます。
上記のように、前日(あるいは年齢とともに前々日も)重たいものを頑張って持った場合や、草取りなどのしゃがみながらの仕事、引越しの手伝いや、大掃除などの、普段行わない重労働によって、筋肉に疲労が蓄積して、これが寝ている間に徐々に反応して、朝いちばん、まだ血液循環が充分でない状態で、酸素がいきわたっていない時に、当たり前の動作で強い痛みを発症してしまうことは、当然考えられます。
しかしこの場合は、御本人も昨日(おととい)、無理をしたことを覚えているでしょうし、痛みがあっても原因に対して不安はないので、ある程度納得がいくし、あきらめもつくと思います。
しかし、先ほどのように、朝起きて、当たり前の日常の動作をしたとたんに、ぎっくり腰を起こして、動けなくなってしまったとき、ここしばらく無理な力仕事をしたことがないし、腰痛の原因がいくら考えても思い浮かばない時は、誰でも非常に不安になってしまいます。
実は、腰を弱らせて、ぎっくり腰を惹き起こす大きな原因は、「椅子に長く座ること」なのです。
ここしばらく、仕事で残業が続いて、いつもより座る時間が極端に長かった。
会議の連続で、ここ何日も座りっぱなしだった。
昨日美容院で、パーマと毛染めで5時間も座っていた。
車の出張で、長時間運転していた。
女子会で、昼から晩まで食事をしながら話し込んでいた。
カラオケボックスで、三回延長した。 などなど・・・。
そのほかにもたくさんのケースが考えられますが、このように、普段と違う時間や環境で長時間椅子に座ることが、急性腰痛の潜在的な、そして本当の原因になっていることを知っておいてください。
そして、この椅子に座ることで起こる問題に関しては、その原因を作っている間、すなわち長時間座っている間は、よほどのことがない限り、痛みを感じることはほとんどなく、これが次の日の朝のぎっくり腰の原因になっていることをご本人が認識することはありません。そのため、次の日、日常のあたりまえの動作をしただけで、急に腰が痛くなってしまうと、パニックになって、強い恐怖感を持ってしまいます。
立っていると、筋肉が疲労します。同じ姿勢を維持するために筋肉は緊張し続けなければならず、慣れない人にとっては、苦痛に感じてしまいます。そして椅子に座ると、その筋疲労から解放されるため、座るほうが体に優しいと感じています。
2008年のNHKスペシャルという番組の中で、「腰痛は、二足歩行する人間の宿命である」という考え方は、間違っているという趣旨の内容が、放送されていました。
それによると、腰痛は、文明が成熟して、椅子生活をするようになってから、出現してきたと、報告されていました。その番組の中では、アフリカの原住民や、アマゾンの奥地の昔ながらの生活を続けている人達には、いわゆる腰痛症がないということが述べられていました。(腰の痛い人はいましたが、これは転倒や木から落ちた人達だったようです。)
椅子の姿勢は、先述のように、まず骨盤環における仙腸関節の離開を作ります。(これに関しては、仙腸関節の専門医の報告の中にも記述されています。)そしてこの仙腸関節の離開が、リンケージしている腰椎のねじれと傾きを作り、その部分の炎症や、それをカバーするための筋肉の緊張を発生させてしまう事がぎっくり腰により痛みの原因になります。
この離開は、立ち、歩くことによって、本来、元の安定した状態に戻るのですが、長時間座り続けることによって、少しくらい歩いただけでは、戻りにくくなってしまいます。またソファーや低い椅子になどの場合は、骨盤環が後方へ回転させられてしまうので、人によっては強い問題を起こしてしまいます。そのうえ、背骨の腰椎の部分では元々前弯した(前に凸)カーブであるのに対して、椅子にリラックスして腰掛けることで。腰椎のカーブは消失したり、逆の後弯カーブになって、本来体重を受ける場所ではない腰椎の椎間関節に、強い荷重がかかってしまうために、これも腰痛の原因になってしまいます。
このように、長時間椅子に座ることによって、腰痛の原因になる問題が、すでに発生しているのですが、まだ本人の意識がはっきりしている間は、筋肉がこれをコントロールしているために、その影響が表に出ることはほとんどありません。
しかし、仙腸関節が緩んだ状態のまま「睡眠」に入ると骨盤や股関節、腰椎に対する筋肉の支持がなくなってしまうことで、朝起きた時筋肉の作用が戻って、再びしっかり、骨盤環や腰部周辺を安定させるまでの間、非常に危険な時間帯になってしまいます。普通に朝起きて、当たり前の普段どおりの生活動作をしただけなのに、突然腰に激痛が走り、ぎっくり腰になってしまうのは、多くの場合、その前日までに蓄えられていた、ご本人の強い疲労と骨盤環や腰椎の不安定が「本当の原因」であり、この危険な状態に対して、きっかけになる(あたりまえの)引き金動作が加わることによって、出現してくる状態であるということをわかってください。
そして、このようなぎっくり腰の発症の経過を考えると、本当に注意しなければいけないのは、くしゃみの仕方や顔の洗い方、ズボンのはき方ではなく、椅子に座り続けている時間や姿勢、ソファーなどのルーズな座り方、車の長時間運転などであり、その原因になる要素をどれだけ減らすことができるのか、しそれができないのなら、どのように対処していけばいいのかを、考えていかなければいけないと思います。
腰痛症を持病として持っておられる患者様の多くは、デスクワークや運転にかかわる仕事をされている人達です。引越しの作業や農業などの肉体労働の場合、もし身体がこの仕事にふさわしくない場合は、それを初めて3か月以内(多くは一か月持たずに)何らかの問題が発生して、仕事が続けられなくなるのが普通です。しかし、3か月以上、その仕事を続けても、何とか身体が持ちこたえた場合は、そのまま鍛えられて、プロの身体になっていくために、筋疲労などは起こっても、いわゆる腰痛症が、その後発生することは、それほど多くありません。しかし、椅子に座り続ことによる骨格系の不安定は、個人差はありますが、鍛えるということはできません。(慣れることはあります)このため、デスクワークや運転にかかわる仕事の方々には、長く続く腰痛の持病が多く見られるのです。
先ほども述べたように、すでに腰に不具合が出ている人にとって、少しぐらいの歩行や、買い物ついでの「歩き回り」だけでは、その今の身体の問題を、解決することはほとんど不可能です。根本的に、腰痛の原因要素を身体から除去するためには、私達が推奨している、習慣的な「40分の生理歩行」を続けることが大切だと思います。
そして、この腰周辺の問題が残っている時点で、歩行以外のスポーツを行っても、多くの場合、腰痛の条件を悪化させることになり、あまりお勧めできません。 一年くらいしっかり歩きこんで、骨盤と腰周辺の安定を獲得してから、お好きなスポーツをはじめられるほうが、安全だと思います。
それでも、腰痛があるのに、歩行もできず、座る仕事から離れられない方々は、継続的に、外からの安定を目的とした対応をとっていくしかありません。曲接骨院では、そのための治療、管理システムを備えています。骨盤安定と脊椎の機能再生のための、様々なプログラムも完備していますので、一度お気軽にご相談ください。