膝の痛みに対する考え方 ~視点を変えて考える~ |
<大切なこと>
一般的には、年齢による関節軟骨のすり減りや関節の変形が、いたみの原因といわれています。確かに一定の年齢になると軟骨は薄くなり、関節自体の形も少しずつ変わってきます。ある程度の年齢で膝が痛くなったとき、レントゲンやМRIで検査すると、大抵の場合、軟骨や関節が変形している状態が見つかりますし,これが痛みの原因として指摘されます。
これは,膝の痛みの考え方としては、現在の医学の常識であり、主流だと思います。しかし私たちの数十年の治療生活の中で、この考え方だけでは理解できないたくさんの患者さんを診てきました。
変形があって手術でしか治らないといわれた患者さんが、治療を続けた結果、ゴルフやテニスができるようになったり、社交ダンスを楽しんだり、正坐ができるようになる例も多く見られます。80歳後半や90歳のどう考えても軟骨はすり減って機能していないと思われる年齢で、関節にはある程度以上の変形がみられる状態なのに、平気で歩きまわり、家事も日常生活も何の問題もなくこなしている患者さん達を拝見していると、膝の痛みの本当の原因として、別の考え方があるのではないか、と私達は考えました。
そこで当院では、常識の考え方だけではなかなか治らない、良い結果の出ない患者さんに、視点を変えていただくことを提案しています。それには、大きく分けて3点のポイントがあります。
3) 膝関節に効果のある、スムーズで安定した、痛みのない関節の動きを取り戻すことを目的とした運動療法を考えなおす。
以上の3点についてもう少し詳しく説明します。
身体のほとんどの体重を支えながら、スムーズに歩行や移動を行うためには、このような頑丈な構造は、当然必要だと思います。しかしこの構造の特徴が、逆に膝関節が痛みやすい関節になる原因を作っています。大腿骨の下の端は、膝関節の上の部分になりますが、上の端はそのまま股関節として骨盤を介して背骨につながっています。
もし骨盤や股関節に何らかの問題が発生して、その結合状態やアライメント(つながりの角度)が変化すると、大腿骨にはねじれが生じ、痛みが発生することになります。
これは、膝関節においての大腿骨と脛骨の二つの受け皿と、二つの突起のかみ合わせにズレをおこし、これが膝の痛みの直接の原因になりえることは、充分考えられます。潤滑液の働きや関節という機械の構造を考えても、この関節のかみ合わせのズレは、膝の潤滑不全を起こし、痛みや炎症の原因になる熱を発生させてしまいます。
当院では、膝の痛みに対し膝だけを見るのではなく、股関節やそれに続く骨盤、脊椎まで詳細に診察、分析し、レントゲンではわからないようなアライメントの異常や、大腿骨にねじれを発生させる原因を追究し、これを改善、整復することによって、膝の痛みの根本的な原因を取り除くことで、膝の症状の回復に努めていきます。