自然治癒力を活性化させる3つの鍵

 

1) 自然治癒力を活性化させるために、神経のスムーズな流れを整える

 

自然治癒力が働くためには、脳がその故障した部分の異常や問題を正確に認知することが必要です。また脳がその問題を察知し、これを修復するように命令を出したとしても、その命令情報が充分にその問題の場所に届かなければ、しっかりとその役目を果たすことはできません。これらの情報の伝達は、すべて神経のネットワークを通じて行われます。この神経の通り道が脳・脊髄は当然ですが、例えば腕に行く上腕神経叢や、下肢を受け持つ腰神経叢などにおいて、何らかの通過障害が起こっていたり、あるいは手足のそれぞれの関節の動きの不具合などによって、末梢の神経や血管の働きが妨げられていれば、当然、自然治癒力が正しく働くはずがありません。

 

曲接骨院ではこの点に着目し、脊髄を通す脊椎と、そこから末梢神経を出す椎間孔、そして重力の下でその土台となる骨盤、そして局所に神経を送り届ける途中での、四肢の関節の健全な動きが、自然治癒力の活性化に絶対に必要な要件だと考えています。

 

そしてこれらの問題を正しく整復し、できる限りスムーズな神経の流れを作ることで、自然治癒力の働きを最大限に高めることができるのではないかと考えています。

 

 

2)自然治癒力を活性化させるために、その必要性を作り出す。

 

人間の身体は障害を受けた時や、発病したとき、初期の段階では、今起こった身体にとっての異常に対して,旺盛な自然治癒力を働かせて、一刻も早く元の状態に戻そうとします。本来は、この急性期や亜急性期の自然治癒力を強く働かせている間に、身体の要求に素直に従って、回復に努めれば、多くの病気やけがは、問題なく治っていくと思われます。

 

しかし仕事や学校の都合、やむ負えない所用や、本人の過剰な頑張りなどによって、大切な治癒期間の最初にうまく対応できなかった場合、身体は徐々に自然治癒力の働きを弱めていきます。慢性化するということは、この治るべき機会を逃したために、自然治癒力があきらめてしまったか、優先順位を下げてしまった結果ということが考えられます。

 

もしある程度長い期間がたって、慢性化してしまった症状に対して、もう一度自然治癒力を発揮させたいとき、曲接骨院ではその「必要性」を作り出すことが大切だと考えています。

 

動物の三大要素といわれるのが生殖、捕食、移動です。そして人間の基本的な移動様式は「直立二足歩行」です。動物の身体はその移動様式に一番適した形をしています。(ヘビや鳥、魚などの移動の方法とその形=合目的形態)
 

  

そこから考えると、人間が直立二足歩行に適した形をしている、ということを前提にして、もし慢性化した症状や問題があって、うまく自然治癒力を活性化させて、改善や治癒にもっていくためには、私達は少しぐらい痛くても、「しっかり歩行をすること」を勧めています。

 

直立二足歩行によって引き出された、今のあなたの痛みは、動物である人間の大切な移動能力を障害する問題であり、この問題は「最優先に解決しなければいけない問題である」と、脳に感じてもらうことが重要です。それにより再び自然治癒力が活発に働き、治癒に至るための大きな力になるはずです。

 

幸い、動物の三大要素である人間にとっての直立二足歩行は、それを続けることによって、別の大きな問題が起こる可能性はほとんどなく、自分の今、困っている問題を正しくはっきりと、脳に伝える最も安全な方法だと考えています。(人間という動物として、優先すべき「歩行」以外の運動では、治癒に向かっていくか、逆に別の大きな問題が起こってしまうか、どのように進むかは残念ながら予測できません。)

 

また歩行それ自体も、当然ロコモーションにかかわる足や膝、腰などの関節筋肉をはじめ、四足時代の前足である肩や両手の問題、頸部頭部の関節までも、体幹に対する影響力として、リハビリ効果を出していくことが期待できます。また左右に分かれた(二つある)臓器は、すべてロコモーションによる左右の動きに便乗して活性化するため、腎臓や生殖器、肺はもちろんのこと、左右に分かれた脳本体も、歩行による治癒力の活性化を、期待できると思います。

 

自然治癒力がうまく働かず慢性の問題が続いているとき、安全に継続できる方法で、効果的に「自然治癒力の必要性」を作り出すことが大切であり、それには能動的な直立二足歩行が最適である、と私たちは考えています。

 

 

3)自然治癒力を活性化させるために、症状の進行を抑える

 

曲接骨院では症状の発生の初期段階で、氷を使った生理冷却療法を用いています。痛みを早く抑えようとするだけならば、消炎鎮痛解熱剤や注射のほうが早く効果を出せると思います。実際、私たちのところに来院された患者様でも、あまりに痛みの訴えが強い場合や、パニックになっておられるような方には、整形外科や医療機関を受診されるようお勧めする場合もあります。しかしながら自然治癒力を確実に積極的に働かせようと考えた時、重要な要件は、今起こっている悪い状態が、更に進行していかないように保っていくことです。いくら自然治癒力が働いて、その問題の改善を図ろうとしても、病状自体がそれより早いスピードで進行してしまう場合、自然治癒力を十分に効果させることは不可能です。

 

急性期、炎症や強い症状が進んでいき、12時間から24時間でピークに達するときの病状の進行は、なかなか止められるものではなく、またそれ自体、治癒のために必要なものですから、ある程度仕方のないものとして、考えておかなければいけません。しかし炎症のピークに達した後、自然治癒力を働かせて、これから積極的に改善に向かおうとするときに、様々な理由により、やむ負えず症状が進んでしまう可能性があるとき、これを抑えるために、生理冷却法が効果します。

 

よほど悪い条件が重ならない限り、+0℃の氷冷(溶け始めた氷の温度)によってその部分の過剰な代謝を抑え最小限の生体反応に保つことで、氷の効果により痛みを少しずつ和らげながら、その部分の病状の進行を遅らせて、自然治癒力を働かせる時間を稼ぐことができます。(恒温動物である人間の局所温度は、氷の+0℃の温度によって約20分で体温から10度下がった27度近傍でとどまり維持されます。)

 

もちろんこれは生理氷冷法として確立された方法であり、蓄冷材や温度の定まらない冷水などでは、この効果を得ることはできず、むしろ「冷え」などの反応によって、治癒を遅らすことにもなりかねません。正しく+0℃の温度の氷を体表面積の1割以下で用いることによって、凍傷を作ることもなく、その部分の過剰な活性を抑えて、患部の現状保存を続けることができるのです。(詳細は症状についての考え方生理冷却法をご確認ください)

 

+0℃の氷による生理冷却法を用いることによって、現在発症しているその病状の進行を遅らせて、自然治癒力を有効に働かせる時間的余裕を作って、できるだけ早い回復にもっていきたいと、私たちは考えています。

 

以上 一般的に言われている自然治癒力も、いつでもどのような条件でもうまく働いてくれるわけではなく、それを活性化させ有効に活用するためには、様々な条件や考え方が必要であるということをご理解ください。そしてあまり焦らないで、ご自身の身体の回復力をもう少し信じてあげて、せめてその病気やけがの常識的な回復時間くらいは、待ってあげることも大切です。