子供の成長と自転車

お孫さんが生まれると、おじいちゃん,おばあちゃんは、早く歩いてほしい、元気に育ってほしいと願います。そして3~4歳になると自転車を買ってあげられる日を楽しみに待ち続けます。

 

しかし本当は、自転車に乗り始めるのは、小学校に入ってからのほうが良いと私達は考えています。

   

突然ですが、人間の子どもは、卵子から始まり、胎児から出産を経て、新生児になります。寝ているだけの状態から、寝返りして、腹ばいからハイハイ、高這いを通過していきます。進化論の、個体発生と系統発生、という考え方があります。異論もありますが、もしダーウィンの考え方が正しければ、子どもは卵子という一つの細胞から、徐々に進化して、出産を経て、水に上がった魚と同じ、手足をバタバタさせるだけの、原始行動といわれる動きをします。そこから両生類、爬虫類の腹ばいから、高這いの四足動物の時代を通り越して、よちよち歩きの類人猿になっていきます。そして完全に直立二足歩行の骨格系が完成するのは、学童年齢すなわち7歳頃と言われています。(脳と内臓機能も含めた完成は15歳)

 

この7歳で人間の骨格になる前に自転車に乗ることで、ハイハイや高這いと同じ格好、同じバランスに戻してしまうことになり、せっかく人間としての姿勢を獲得し、背骨の正しいS字カーブを完成させようとしているときに,四足歩行と同じ形に戻ることで、直立する人間としての発達がうまくいかず、姿勢や身体の様々な場所に、問題を残してしまうことになります。

 

それでも、昔はたとえ早く自転車に乗ったとしても、普段から広場や公園で遊んだり、外を歩き回ることが当たり前だったので、自転車の影響はそれほど大きなものではありませんでした。しかし今の子供たちは、自由に遊びまわる場所が少なく、ゲームや習い事などで、歩いたり走ったりする機会が極端に少なくなり、そのうえ移動するときは、お父さんお母さんの車か、自転車の後ろになってしまうことで、人間としての直立二足歩行の確立と、骨格系の正しい成長が、できなくなってしまうのです。

 

最近、電車の中で、スマホなどに夢中になっている、若い人たちの、座る恰好が、変だとは思われませんか? 全員ではありませんが、おかしな形の背中のカーブの姿勢をよく見かけます。人間は、背骨のS字カーブによって、姿勢が維持されているのですが、前述のように、早くから自転車に乗ることで、S字カーブがうまく作られず、C型カーブになってしまいます。このC型カーブは、実は犬や猫、馬などの四足動物の背骨と同じカーブです。一度試しに、犬や猫を人間のように、椅子に腰かけさせてみてください。電車の中で座って、スマホに夢中になっている若い人たちと、ほとんど変わらない格好になるはずです。

 

S字カーブが完成する前に、自転車で四足歩行と同じ重心に戻してしまうことで、人間としての骨格が出来上がる前に、大人になってしまうのです。そしてこの問題は、骨格の人種差と環境によって、特に日本人に多くみられます。またこのC型カーブは、ストレートネックフラットバックといわれる背骨の状態を作るため、肩こりやくび、腰の様々な症状を作る原因にもなります。

 

お孫さんに自転車を買ってあげて、一日も早く喜ぶ顔が見たいおじいちゃん、おばあちゃんの気持ちはよくわかります。(私にも孫がいます)一緒に頑張って練習して、自分で自転車に乗れるようになって、家族みんなで出かけることを夢見ている、お父さんお母さんの気持ちも理解できます。

 

それでも、もしできるなら小学校に入って、友達と遊ぶとき、本当に自転車が必要だと感じて、自分から買ってほしいと言い出すまで、待ってあげられないでしょうか。それによって7歳になって、背骨のS字カーブと頭蓋骨を含めた骨格系、筋肉や反射神経などの完成を迎えてから、自転車に乗り始めるようにすることで、その後の健康な身体や脳の発達に、大きな良い影響を与えてくれると思います。

 

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